ハピネスフル

ハピネスが好きだ
おそらく人より少し幸せに気づきやすい
というより人より少し幸せになりやすい

レシートの数字がゾロ目であったり
車のナンバーで面白い語呂合わせが作れてしまったり
道路の窪みが変な顔に見えたり
草木が茂った様が綺麗だったり
ご飯が想像通りに出来たり
ストレッチが上手く出来て爽快だったり
文庫本を一度で読破出来たり
パーカーを裏表にして着たら思いの外良かったり
ブラのホックが一発で留めれたり外せたり
喫した煙が空気と混ざって美味しく感じたり
正座でご飯を美しく食べれたり
ヒールの踵が心地良く響いたり
街路樹のどうだんツツジの紅葉に目を細めたり
歩きスマホ注意のポスターデザインの面白さに気付いたり
散歩中の野良猫と目が合ったり

こんなにも今日は楽しいことに気付けた
けれども絶望は過去との加点式なので本日の気付いた楽しみを、感じたあの幸せを、とても、とても一瞬に、秋風の様に攫っていく
さようならハピネス。

思い出す100点満点の答案用紙の後に
返された29点の答案用紙。
100点の教科のことなど無かったことになった
そんな感じ。幸不幸は表裏一体ではなく
裏になったらなったまま、擦れて消えるまで裏を向いている。

無題

飛ぶなら空を向いて飛びたい
迫り来る地面を見るよりも広い夜の空なり眩しい太陽なんかを見て目眩とかしたりして気を亡くしたい
ジェットコースターやバンジージャンプで証明されたと思うけど、人は高いところから落ちても滅多に気絶したりはしないだろうから。

そういう講釈垂れた夢を見まして
棺桶に入った自分は一人一人に謝り歩いておりました。
ごめんね、嫌になったとかっていうか、どっちかっていうと割と満足してしもてん、これ以上を考えられへんしこれ以上の壁は乗り越えられへんと思ったしやったら今でもええんちゃうかなって、ごめんな。

そんな、ようなことを迷々申し立て
意識を得た時には瞼の皺から塩水を注いでおりました。

調子は良いはずなんですけど何がそんなに事足りないのでしょうか。
常、気持ちと思考はバラ売りされており、組み合わせがズレてしまうと体力を削られてしまい、まるで高性能処理を止めてしまうハイテクノロジーになってしまいます。

ハイテクノロジーで、賢く感じたのは
手に負えぬことがあらば、止まり、最初から演算するところでございます。
己が、今一つと感じるのは
手に負えぬまま進み、ぶつかり、演算すら出来なくなるところでございます。

深夜に生きる

幹線道路前ドラッグストアの深夜。
閉店した店前はシャッターが降りていても白っぽい蛍光灯が眩しく
何も走っていない道路の街路樹か主要道路の橋桁に影になっている。
私は歩道の花壇に座って毎分徘徊する歯抜けの老人とシャッターの一際明るい所で上半身裸のマリリン・モンローみたいな痴女と時折やって来るモンローの雇主みたいな人とのやり取りや痴女を見つけてチップを渡す深夜の人間をずっとずっと眺めていた。
人の通りは少ないけれど物騒では無くて
みな、この時間で人生を過している、干渉は最低限の住人達の雰囲気と、寒くも暑くもないカラリとした空気が心地良かった。

ふと毎分来る老人がモンローに気付いて明るい所に近付き、二三頷いたと思ったらモンローに「モデルにならへんか、ええ体しとる、ほんまにええから、わしは画家やってん。」
モンローは営業らしい顔していたけど気分を良くして下半身も丸裸になってモデルとなり画家は座り込み、カンバスと油彩のような道具で本当に真面目に描き出した
私はその風景が、人と人が関わった瞬間の興奮した思いを噛み締めていたら母がやって来て
「出る時間やで、行くで」と歩き始めたので私もつられて立ち上がった、行く先が何処かは分からなかった。
モンローと画家にはモンローの雇主みたいな人も一緒になって駐車場は侘しいながらも深夜の賑わいみたいな空気だった。
やらしい、嫌な展開にはならないだろう、真面目なまま朝を迎えるだろうと思った。

母とは気付いたら新幹線やら飛行機を乗り継ぎ
、いつの間にか琵琶湖を空から見下ろしていた

グーグルストリートビューくらいの距離で琵琶湖の青黒いのが見えて、天気は悪くないと思った
けれど、天気は荒れているらしく飛行機の中は少し落ち着かない人々が多く、私もなんだかソワソワしながら琵琶湖を見ていたら
湖畔の波がグワーーーーッと中心に引いていく
草木の根も見えるくらいで一目で「ヤバいな、これは大きな波になって街を浸すな」と怖さがあった
どうやら荒れた天気は台風らしく、なのに雲が全く無くてヒタヒタに地図が水に浸かるの想像できて「誰かに言わないと、誰かに電話したい、早く」

焦っていたら、いつの間にか大阪梅田駅にいた
新幹線で遠距離の旅を悠長に終え8番出口を探していた
人がひしめき合って、人の少ない所を進みJRの駅員に「8番出口から出たいのですが」と伝えたら「とりあえず混雑しておりますので、そちらの階段を昇って下さい」と案内された
駅は赤茶のレンガ造りで駅員のいる窓口は簡素なもの、そこに何十人と列車から降りた人が詰めかけていた

「あの階段登ったらええねんて」
母に伝え、2人で黄色の切符をもって歩いた
梅田8番出口の矢印に従って歩いた、薄暗い中をポロポロと他にも人が歩いていた
私は内心まだ早く電話をして琵琶湖の津波をつたえなくては、と焦り心配していたが
歩いても歩いても8番出口に辿り着かず疲れてしまった
また人集りがあったので意を決して向かうと中心には駅員がいたので8番出口に行きたい旨を伝え、黄色い映画のチケットみたいな切符を見せると「どうして処理してないんですか!」と怒鳴られた。1番初めのところで見せなくてはならなかったらしい。とても怒られた。

駅を出ても8番出口には、まだ辿り着かず晴れた梅田らしいところの歩道橋をゾロゾロ歩いて駅の中も歩いて、空腹に耐えかね何か食べたくなってきたので母に「とりあえず休もう、休憩しよ」と言ったのが21時頃。
飲食店はキラキラ、オレンジのイルミネーションとしっかりとした人生の人たちが賑やかに食事を楽しんでいた
私たちはヘトヘトで、そんな賑やかで人の多いところで休む気にはなれなかった。

賑やか過ぎる駅ビルを出て青空が良く見える歩道橋を進み、いくつかの喫茶店覗いては
母がやれ「カレーは気分じゃない」だの「ここは煙草が吸えへん」だのお気に召さないようで
何度も通り過ぎ、もう休めるならどこでもいいんじゃないかと、私はもうどうでもよくなった頃
赤い看板が扉にかかる喫茶店が目の前にあったのでよく見てみると「猫 います トビラ開閉 注意」「2階席 広いです」と母も気になったようなので やっとの事で入店できた。

店に入ってすぐの所に白い階段があり
所々に猫が伸びたり飛んだりしていた
私はまだ琵琶湖の浸水が気になっていたが
座敷の白いラグが猫の毛足みたいにサラリとしたふわふわで やっと座れたことに安堵した。

琵琶湖の祖母に電話してみると
「そっちから見たら酷いようだけど、大したことじゃなかったんよ」と言われたが やはり向かった方がいいだろうと母と話をして
スパイスが少しオシャレに添えられたカレーを食べた。



寝起きからとても疲れて今日は一日、
そうだ こんなにも強烈だったんだから
書いてみようと思った
最近、夢をよく見る、とても疲れる。

緑の飛行体


この鑑別所の所長はとても感じがいい。
「ハイ、仕様がないですね。けれど良い感じですよ、この調子で行きましょう」

声は笑っているが視線はもう書類に落とされていて見送られているのかわからぬまま「ありがとうございました。よろしくお願いします」と訳の分からないさようならをする。

鑑別所の受付は常に混沌を窮めている
全く空気の読めていない陽気過ぎるBGM。
かたかたと震えながら落ち着きのない小人。
爪を噛みながら「ご自由にどうぞ」の珈琲をザブザブ飲む貴婦人に、睨む老人、天井の穴の規則性はあるのかと上を向く自分。

リズムカルなBGMに混じってパタパタと仮靴の跳ねる音がよく響く床。
雑居ビルに入る鑑別所には高尚な板が敷かれているらしく建付けの悪い扉は開け閉めする度に軋んで座る椅子すらも揺らす。

はっきり言ってめちゃくちゃ居心地良くない鑑別所には二週に1度通い、予定を切り詰めている
安寧を得る為に切り詰めているのは時間と資源と精神である
無から有は得られないとは言うが、有から無にはとても簡単に出来る

鑑別所から出ると夜風に混じり秋の匂い
花々の香りではなく虫が潰れてしまった刺す臭い。
虚しい気持ちを宥めるために飴を舐める
飴は苦い。見えている世が正しいのなら飴は舐めない方が良いと夢の住人が叫んでいる
夢は今見ている、目覚めたら本当の秋の匂いがするだろう、住人の話を信じることにして眠る。